★ はじめに


本稿の手続き通りに設定し、プログラムをコピペすれば、自動で経験サンプリング調査ができます。新しい知見を生み出す経験サンプリング研究に、是非チャレンジしてみてください。

経験サンプリングとは


経験サンプリング

スマートフォン端末などを使用して、1日に複数回、数日から数週間に渡ってアンケート調査を行う方法を経験サンプリング法(Experience Sampling Method: ESM)と言います。生態学的経時的調査法(Ecological Momentary Assessment: EMA)とも呼ばれます。その名の通り、調査参加者が日常生活を送っているその現場でデータ収集を行うことになるため、生態学的妥当性の高い調査法だと言われています。また、個人に複数回のデータを取得するため、変数間の時間的な前後関係を数時間の単位で取得できるなどのメリットがあります。この10年の間に、経験サンプリング法を用いた研究が増加し、新しい知見が世に送り出されています。

経験サンプリング調査を実施する際の障壁

経験サンプリングの調査手続きは煩雑です。複数回の回答依頼を多くの参加者に求める必要があります。回答依頼を行うメールアドレスの登録など、とても手作業では叶いません。ESMを実現するためには、相応のシステムが必要です。既にいくつか専用のアプリケーションも開発されていますが、有料で手が出せない場合や、搭載された機能が自身の調査デザインに合わない場合などがあります。そのような課題を、Google Formsと、それを制御するプログラム言語Google Apps Scriptで解決しようというのが、本稿での試みです。

Google Forms と Google Apps Script


Google Formsとは

Googleが無料で提供しているWebアンケートフォームのサービスです。Googleアカウントに付随するGoogle Driveの中で、簡単に作成できます。作成したフォームのURLにアクセスしてもらえば、気軽にアンケート調査と回答の記録ができるという仕組みです。リッカートスケールや自由記述など、様々な回答スタイルを設定できます。ただし、Visual Analogue Scale(VAS)は使用できません。

Google Apps Scriptとは

Googleが提供するWebアプリケーション(Forms やDocument, Spreadsheetなど)を制御するプログラミング言語です。略称はGAS。文法記法はjava scriptと同じですが、GoogleのWebアプリケーション制御に特化した機能が備わっています。

  • 本稿では、後述する調査フォームと登録フォームの回答記録用スプレッドシートの裏にGoogle Apps Scriptを記述し、調査の制御と自動化を行います。

システムの構造


調査用フォーム

メインとなるのは、経験サンプリングで使用するアンケートフォームです。作成したアンケートフォームへのURLが記載されたメールを調査参加者に何度も送り、メールが届いたらフォームへアクセスして回答するのが基本の流れです。

  • 回答データは調査フォーム専用のスプレッドシート(Excelとおなじ)に記録されていきます。

  • Google Apps Script:調査フォームのスプレッドシートに付随するスクリプトエディタに記述します。 最終的なデータ保存先のスプレッドシートを作成するコマンドが入ります。

登録用フォーム

調査用フォームのURLを記載したメールの送り先(メールアドレス)や、研究用ID、年齢・性別の登録を行います。ここで得たIDとメールアドレスの情報を使って、メール送信のタイミングなどを自動生成していきます。

  • 登録情報はスプレッドシートに記録されていきます。

  • Google Apps Script: 登録フォームのスプレッドシート裏に記述します。調査デザインの設定項目に関するシートを自動生成、調査デザインにあわせたメールの送信時刻の自動生成、個人ごとのアンケートフォーム自動作成、最終的に集まったデータを一箇所に自動集約するコマンドなどが記載されます。

調査用Googleアカウントの開設


事前に、調査用のGoogleアカウントを開設しておいてください。この手続きは、エラーを低減するためにも、調査参加者のメールアドレスを研究者自身のアカウントに記録させない意味でも重要です。特に、研究者が調査参加者のメールアドレスを知ることが適切ではない場合には、アカウントを切り分けて別の管理者にシステムを管理してもらうと良いでしょう。システムはいったん動き出すと全自動ですので、管理者への負担はほとんどありません。


STEP 1 調査用フォームの作成


ここから、システムの構築手続きに入ります。